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緑膿菌は、グラム陰性好気性桿菌の一種で土壌や水中、植物、動物(ヒトを含む)などありとあらゆる自然環境に存在している常在菌です。この菌が創部に感染した場合、菌が緑色の色素を産生し、膿が緑色になるため、「緑膿菌」という名前が付けられました。
健康な成人だと約15%が腸内や口腔内に緑膿菌がいると言われていますが、緑膿菌は毒性が低いため、健康な人の場合は緑膿菌がいても感染することはありません。ですが、免疫力が極端に低下している人は、緑膿菌に感染して様々な症状を引き起こします。
また、緑膿菌の怖い点は、元々消毒薬や抗生物質が効きにくい性質を持っていて、さらに多くの抗生物質に耐性を持つ多剤耐性緑膿菌が出現している点です。
緑膿菌は、身体の様々な部位で感染を起こします。緑膿菌が引き起こす感染症には、呼吸器感染症や消化器感染症、菌血症(敗血症)、尿路感染症、褥瘡(床ずれ)や手術創部への感染などがあります。
呼吸器感染を起こせば、咳や痰、呼吸困難感などの症状が出ますし、消化管感染を起こせば下痢や腹痛が出ます。
また、血液中に緑膿菌が入り込むと菌血症(敗血症)を引き起こしますが、菌血症になると全身に緑膿菌が散らばってしまうため、身体中の複数個所で緑膿菌による感染症が起こるリスクが高まりますし、菌血症になるとショック状態に陥りやすく、血圧低下や循環不全を起こして、多臓器不全に移行し、死に至ることもあります。
緑膿菌の感染経路は、外因性と内因性の2通りがあります。
外因性は、いわゆる「接触感染」です。緑膿菌が付着した人の手指や器具・道具などに触れることで感染を起こします。外因性は日常生活内でも起こりますし、病院内でも起こります。
内因性は、不適切で長期間に及ぶ抗生物質の使用により常在菌が死滅して、抗生物質に耐性を持つ緑膿菌(多剤耐性緑膿菌)が異常増殖したことで起こる感染経路です。内因性は、抗生物質の使用が原因ですので、病院でのみ起こります。
緑膿菌は免疫力が落ちることで感染しますが、重度の糖尿病や肝不全などの患者や抗がん剤や免疫抑制剤を投与している人、カテーテル類を長期間挿入している人、寝たきりの人や高齢者などは、特に緑膿菌に感染しやすいため注意が必要です。
緑膿菌感染症の治療は、緑膿菌に効果を発揮する抗生物質の使用が基本となります。緑膿菌に感染する人は、免疫力が低下している場合が多いので、免疫力を低下させている原疾患の治療を行いつつ、免疫機能や栄養状態を改善することも同時に行われます。
また、長期のカテーテル挿入が原因の場合は、可能な限りカテーテルを抜去したり、違う部位への刺し替えを行い、創部感染の場合は毎日創部を洗浄することが重要です。
緑膿菌は元々抗生物質が効きにくいという性質を持っていて、第一世代セフェム系と第二世代セフェム系は、ほとんど効果がありません。緑膿菌への有効性が認められているのは、フルオロキノロン系、カルバペネム系、アミノグリコシド系の3種類でした。
しかし、1970年代ごろからこれらの抗生物質に耐性を持つ多剤耐性緑膿菌が検出されるようになり、治療はさらに困難になっています。多剤耐性緑膿菌による感染症を治療する場合、感染を引き起こした緑膿菌が、どの抗生物質に耐性を持っているか、どの抗生物質に感受性があるかをしっかり見極めてから、治療を開始する必要があります。
緑膿菌は、院内感染の原因菌の代表格です。病院内には免疫力の低下した患者さんが多いですし、抗生物質の不適切な使用による内因性の感染も多いためです。
緑膿菌の院内感染は、主に医療従事者の手指や医療器具を介して広まっていきます。特に多剤耐性緑膿菌の院内感染は、抗生物質による治療が困難であり、2006年以降数人の死者を出しています。
院内感染の予防法は、医療従事者の手洗いの徹底や医療器具の適切な消毒、緑膿菌が繁殖しやすい水周りの清掃、保菌者の隔離などがあります。
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