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ホーム>感染症情報>MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)の常識
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MRSAとは、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌のことです。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌は、英語でMethicillin Resistant Staphylococcus Aureusと書きますので、単語の頭文字をとってMRSAと呼ばれています。
MRSAは、その名のとおり黄色ブドウ球菌の一種です。黄色ブドウ球菌は、ごくありふれた細菌で、健康な人の皮膚などにも付着している常在菌です。
黄色ブドウ球菌は毒性があまり強くないため、健康な人であれば傷口などに付着しても、発症することはなく、重症化することもありません。ただ、免疫力が著しく低下している人の場合、感染症を引き起こすことがあります。
MRSAは黄色ブドウ球菌の中でも、抗生物質に耐性がある遺伝子を持っています。名前だけ見ると、メチシリン(ペニシリン系製剤)だけに耐性があるのかと思いますが、メチシリンだけではなく、ほとんどの抗生物質に耐性があるため、多剤耐性黄色ブドウ球菌と呼ばれることもあります。
MRSAは、黄色ブドウ球菌の一種ですので、健康な人が感染しても発症しません。ただ、大手術後や全身熱傷後など免疫が低下している人や血管内にカテーテルを長期的に入れている人、気管内挿管をしている人などは、MRSAに感染すると重症化しやすいので注意が必要です。
このような人がMRSAに感染した場合、肺炎や関節炎、菌血症(敗血症)、髄膜炎などを引き起こします。
肺炎の場合は発熱や咳、痰、呼吸困難感、関節炎は痛みや腫脹、発赤などの症状が出ます。菌血症になると髄膜炎や腹膜炎を合併したり、重症化するとショック状態に陥り、血圧低下や頻脈、頻呼吸などの症状が現れて、多臓器不全になり、死に至ることもあります。
人間の腸内には、約100種類100兆個の細菌が生息しています。この腸内細菌がバランスを保つことは、健康維持に役立っています。
病気の治療で抗生物質を使用した場合、使用した抗生物質に感受性がある腸内細菌は死滅してしまいます。でも、多くの抗生物質に耐性があるMRSAは死滅しませんので、腸内細菌のバランスが崩れ、MRSAが出す毒素により腸の粘膜に炎症が起こり、MRSA腸炎を発症します。
MRSA腸炎が起こりやすい抗生物質は第三世代セフェム系です。第三世代セフェム系は、腸内細菌のほとんどに感受性が高いため、MRSAだけが異常に増殖しやすいのです。
MRSA腸炎は、免疫力が低下している患者さんが抗生物質を使用した場合に発症する可能性がありますが、特に胃切除後の人やH2ブロッカーを服用している人は、口や気道から消化管に侵入したMRSAを胃酸で殺菌できないため、MRSA腸炎の発症リスクは高くなります。
MRSA腸炎の症状は、激しい下痢です。MRSA腸炎による下痢便は緑色なのが特徴ですが、重症化すると米のとぎ汁のような白色の水様便に変わります。MRSA腸炎を発症すると、脱水になり電解質バランスが崩れてしまうので、早期に適切な治療を行う必要があります。
MRSAの感染経路は、接触感染です。手指や医療器具などを介して広がっていきます。また、保菌者から撒き散らされた菌が空気中に舞い上がり、それを吸い込むことでも感染します。
MRSAというと、院内感染の主な原因菌のひとつですが、院内感染が起こりやすい理由として、感染経路が接触感染であるという点が挙げられます。
医療職者がMRSAの保菌者に触れ、そのままほかの患者さんの処置を行うと、MRSAはあっという間に院内に広がります。MRSAが院内感染を起こす原因のほとんどが医療職者の手指を介したものと言われています。病院に入院している患者さんは、免疫力が低下している人が多いため、MRSA発症率が高いことも院内感染が起こりやすい理由のひとつです。
通常、感染症を起こした場合、その原因菌に有効な抗生物質を投与しますが、MRSAは多くの抗生物質に耐性を持っているため、使用できる抗生物質が限られています。
MRSAに有効な抗生物質には、バンコマイシンがあります。このほかアルベカシンやミノサイクリンなどの抗生物質も有効と言われています。
ただ、MRSAの第一選択薬ともいえるバンコマイシンは、MRSAの治療に広く使われてきましたが、2002年にバンコマイシンに耐性を持つバンコマイシン耐性ブドウ球菌が発見されていて、バンコマイシンで効果がない場合は、対症療法を行い、患者さんの免疫力・抵抗力に期待するしかありません。
2013年6月に日本感染症学会と日本化学療法学会から「MRSA感染症の治療ガイドライン」が公開されました。このガイドラインには、抗MRSA薬の種類や特徴、選択基準や疾患別の抗MRSA薬の選択方法などが記載されています。
このガイドラインは、MRSAによる院内感染が大きな問題になっていたにもかかわらず、薬剤の使用法や使用基準などが曖昧なままだったことを受けて作成・公開されました。
このガイドラインは、正しく適切に抗MRSA薬を使用することで、MRSA感染症の治療に役立つだけでなく、これ以上耐性菌を増やさないようにする効果が期待されています。
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